「ツルツルしてるし問題ないと思うんだけど、ちょっと他の先生にも見てもらいましょう。」

 カーテン越しに聞こえてくる、天の声。ではなく担当女医の声。ここは総合病院の婦人科。ツルツルしてて問題ないのは、私のヴァジャイナ。


 桃をパッカーーンしたようなセンターで割れる座面。鈍い機械音とともにゆっくり左右に動く。お尻と太ももの筋肉に力を入れ抵抗しようとしたところで、非日常な体制へ否応なく固定される。M字開脚インリンオブジョイトイ。ふだん恥ずかしいと思うことはないに等しいけど、婦人科の内診台はやっぱ緊張する。

 「ちょっと冷たくなるよ。」次の瞬間、極端に冷たい金属が体内に挿入される。全身に力が入る。こわばった私のヴァジャイナは、じょじょにそれを受け入れる。その器具は「クスコ」というらしく、鳥のくちばしみたいな形をしている。すっげー違和感。しかし、今回私の下半身内部に異常があるかもしれないということで、ここへ来た。区の子宮頸がん検診で引っかかり、紹介状をもらいここへ来た。

 

 奥から低い声が近づいてくる。セカンドオピニオンのスタート。セカンドオピニオンとは、主治医以外の医師に求める第二の意見。

「何歳?」

「33歳です。」

「結婚は?」

「してないです。」

Sex and the Cityで鍛えられていたこともあり、診断に加わったベテラン男性医師の問診に、私は淡々と回答した。それ以上の質問はなかったけど、続けるとすればきっとこうだろう。35歳を過ぎると、月に一度の排卵日にセックスをしたとしても、妊娠できる確率は10~15%。出産したいなら早めにね。世のアラサーオーバー。(私も含む。)悩みといえば、まずは好きな人ができない。だから、彼氏ができない。なので、結婚はしたいけどできる気がしない。初期段階すらクリアできていないのに、妊娠なんぞ先の話。先生は私たちのもどかしさも知らず、見えないハードルを上げてくる。


 カーテンの向こう側で、2人の医師がざわついている。会話に耳を傾けてみたが、専門用語のパレード。私にはさっぱり分からない。私の奥を調べるのに使用した器具をトレーに置いたのか、鈍い金属音が響く。たまに別の声の女性が相槌を打つ声も聞こえる。あちら側に何人いるのか、もはや不明。私の不安に気付いたのか、少しふくよかな若手看護師がチラッと顔を覗かせてくれる。「大丈夫ですか?もう少しですからね。」もう少し、という曖昧な時間の提示をありがとう、と思いながらも私は首を縦に振った。


 実は今日の診察の予約は10時だった。なのに10分過ぎても呼ばれないので催促したところ「3名お待ちいただいてるのでその後です。」と納得のいかない返事だった。結局、診察室に入るまで40分もかかった。総合病院は待つのが当たり前みたいな上から対応が本当嫌い。そんな心の声が婦人科内に伝わってしまったのだろうか。気遣っていただきなんだか恐縮です。ホスピタルホスピタリティ、あざっす!

 「これは大丈夫でしょう。はい、終わり。戻って来て。」ベテラン男性医師はぶっきらぼうに言う。再び部屋は元の静けさを取り戻した。記者会見を終えたばかりの私の下半身。次々と飛ばされたカメラのフラッシュのような診断と、普段しない緊張により、カラッカラに干からびているように感じた。ヴァジャイナ砂漠。いやいや、そうなると、長らく「男に抱かれていない女」みたいなニュアンスにもなり兼ねないから止めておこうよ。それより、服を着よう笑 お気に入りの濃いデニムを履く。お疲れ様と右手でその部分をポンポンと優しくたたき、カーテンの向こう側へ戻る。


 「膣にポリープが見つかったよ。五本指のような、手のような形のやつね。ポコっと。」女医が内視鏡を使ったレポートを報告してくれる。院内という場をわきまえた小さな声で、ボソボソっと、でも優しい口調で話しはじめる先生。きっとこの人は、どの患者さんに対してもこうなんだろうな。不安な気持ちを抱えて来院した患者さんを安心させてくれる。ただのガリ勉医師ではないとみた笑 彼女が持つ独特の雰囲気に引き込まれていく。なんだろう、まだ会ったばかりなのに。たぶん、私はこの人が好きだ。人間としてね。

 先生は、一眼レフカメラを取り出し机の上にのせる。気付かぬうちにカメラに納められていた、我がポリープ群。そのスナップが小さなレンズに映し出される。みずみずしい粘膜は、桜色ピンク、美しい。デキモノは個性です、みたいな主張を感じた。先生が言うところの五本指を見た時に私はふとモンキーバナナを思い出した。母の実家の南の島で採れるモンキーバナナ。続けて、昨年他界した祖母のことがよぎる。私の膣内に祖母が生きている!というなぞの解釈。違うな、それは笑


    安堵と同時に長らくの不安が解消された。

    というのもここ数年、性交渉時に違和感があったのだ。このポリープ群が男性の突起物に接触した時に痛んでいたのね。ホッとした。良かった〜。そして、納得した。そのことを先生に伝えると「膣なんてもんは赤ちゃんが育って出てくるトンネルなんだよ。伸縮性ばっちり。ゴム風船じゃないんだから。ポリープが影響して挿入時に痛いとかはないよ。」と先生が言い放った。 なんやて!!!!!え!つまり、あの痛みはトンネルの不具合ではないということなのかっっっ!


    モンキーバナナのせいじゃなかったのか!


 だとすると、だとすると、なやねん!!!相手の持ち物のせいなんか!今日この日まで自分に原因があると思っていたけど、違うのね。これまで痛いと感じた男性の顔が走馬灯。カメラロールをフリックするかのように!シャーシャー。ちなみにこの症状であれば妊娠には全く問題ないとのこと。はぁ〜安心。3ヶ月後に再検査をして変わりなければ、その後は定期検診を受ける。成長しているようであれば、その時考えましょってことになった。


 ついでに子宮に筋腫が3つあるという情報もゲット。再び一眼を覗く。「え、子宮筋腫。それ逆にやっべーやつじゃないんすか?」って、私が急に軽快に話し出すと、テレビで見たことのあるような顔をした先生が優しく私をなだめる。この人の横顔、話すペース、言葉遣い。脳科学者のあの人だ!なんだっけ...なんだっけ!中野信子っ!カツラはかぶっていないようだ笑 似ているだけなのか、本人なのかわからない。名札をチラッと見るとどうやら別人のようだ。

 

 相性が合う殿方に出会えることは稀な機会。体の相性はもちろん、考え方や価値観、センスが違うと長続きしない。辛い。まずは出会って心を通わせ、ねじ込んでもらい、丁寧に確かめていく作業をしたい。将来、子供は持ちたいけど、いまは相手がいない。しかも相手探しはとても困難だから、せめていまは健康を保とうと思う。

 

 お会計まで約2時間。総合病院は本当時間とお金がかかるわね。だけど、その分不安は解消され、気分も晴れた。やった!そして、病院を出て電源をつけたiPhone。LINEに赤いポッチを確認する。母からだ。画面をタップするとまさかのまさか。モンキーバナーーナの写真が添付されているではないか!今年は豊作だということで毎週田舎から届くらしい。タイミング〜〜〜笑

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東京都出身。Singer l Songwriter
「一人で生きることを決めたわけでもなく、二人で生きることを諦めたわけではない。」タイプの大人女子集まれー!

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