始まりは今年2018年2月16日。
マカオに向けた製作に追われる中一通のラインが届きました。
送り主はスタイリスト小川恭平さん。
恭平さんのラインのアイコンはサングラスをかけたポーカーフェイス。
その写真を見ただけで緊張して背筋がシャキッとします。(いい意味です。)
依頼はmiwaさんの武道館ライブに向けた衣装制作。
トップス2着、フィッティングは同月26日。
「いけますか?」
「いけます。」即答。
本当のところかなりスケジュールは首締まるけれど断る選択肢がありませんでした。
三年ぶりのmiwaさんの武道館ライブの衣装。
あの時の感動が熱く胸に蘇りました。
ライブ衣装を"オーダー"で編ませてくれるのは現在恭平さんだけです。
多くの場合が元々ある作品から選出されます。
元々ある作品はan/eddyが個展やポップアップで発表しているもので私がその時々の思想や思考で編んだものです。
オーダーの場合は、ライブやコンサートのコンセプト、作り出したいイメージが出来上がって最後に衣装なのでそういったものを踏まえた恭平さんのイメージを聞きます。
最初にいただいたライン、できますと答えてからフィッティングまで10日ありません。
(すぐ、走り出したい!)
「明日打ち合わせ可能でしょうか。」
自分から積極的に打ち合わせをお願いします。
時間がない中編むのは自分だから。
衣装のイメージを聞いてラフスケッチをいただいて、
(これトップスっていうボリュームじゃないよなぁチュニックだよなぁ)なんて思ってさらに焦ったりしつつ。
1日あけて使用する糸の打ち合わせの約束をして帰宅。
私は都内に住んでいますがスタイリストさんたちのタイトな仕事に合わせるとなると都内に住んでいることはとても大きな利点だといつも思います。
打ち合わせまでの中一日で依頼されたイメージに合う糸を探し歩き、買っていきます。
糸の状態と編み地になった時では色味など印象が変わることが多いので購入した糸それぞれの編み地も用意します。
このとき編み地は本番で編みたい柄で編みます。
恭平さんからのリクエストは「元気な色」「太い糸でざっくり編む」「素材はサマーニット」でした。
ウールだと原毛で太い糸はたくさんありますがコットンで極太の糸はなかなかありません。さらに発色が良くて元気な色。
日本の糸はかすれや渋みのある色、淡い色が多くなかなか発色のいい糸がありません。
探し回って原産国がフランスの糸を中心に3-4種類を混ぜて一色を作ることにしました。
編むときは3-4本の糸の引き揃えです。
青、ピンク、赤、黄色の四色をそれぞれ何種類かの組み合わせで編んだものを用意しました。
そして最終的に赤と黄色になりました。
サンプルで見せた編み地。
素材はコットンやリネン。
全体で見ると単色に見えるが3-4色の赤、3-4色の黄色が合わさって一つの赤、一つの黄色に見せています。

miwaさんは他のアーティストの方と違ってギターを弾くので長さは七分でフレアに広がる袖という依頼を聞いた時に真っ先にギターの邪魔にならない事を考えました。
今までのライブ映像を見倒して長さを研究。
三年前の映像も久しぶりに見て込み上げる感動、涙。
衣装を編み上げている途中CM用の製作も4点頼まれ泣きそうになりながらもアシスタントのももこの仕事ぶりもありクリア。
miwaさんの武道館ライブの衣装フィッティングの日を迎えました。
三年前はフィッティングに同行したのですが今回はせず、
提出しフィードバックを待つ間にホワイトデー企画のイヤリングを製作、文面も作り告知ができました。
その日の夕方には作品とフィードバックが戻ってきます。
大きな変更があったらどうしようかとドキドキしながら言葉を待ちます。
大きな修正がなくてホッとしました。
なんとなく言えずにいたライブ直前の3/2深夜から3/7早朝までのマカオ出張をこのとき恐る恐るに告げると、、、
なんと!
同じ日程で恭平さんも都内にいないとのこと!!
なんの運命?!と笑ってしまいました。