羊と鋼と森

著者 : 宮下奈都

調律師のお話。


初めて知った調律師の世界。

ピアニストの方が注目されやすいけれど、ピアニストが弾くピアノには調律師という縁の下の力持ちが必ず存在することを再確認した。


音と音楽は全くの別物。



ピアノと音へ探求の奥深さがしっとり描かれていて、”音を整える”という想像しにくい調律師の仕事も難なくイメージできた。



私は、物語よりも主人公に惹かれた。


一見、平凡で地味。

けれど他者とのコミュニケーションには困らない性格の持ち主。

知りたいことはきちんと聞き、自分の考えは曲げずに話す。

自分の心が感じたことを素直に頑固に信じ通せる。

無彩色に見えるのに、柔軟で強烈な自我の持ち主。


真っ当に育ってきた素朴で純粋な主人公が、この物語には欠かせなかった。




天職だとかそうでないとか、主人公の葛藤は誰もが持つものだと思う。


“才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ”(p224)



ーーーーー好きこそ物の上手なれ


それがどこまで仕事になるか、それは私にも分からない、けれど”好き”何をも凌駕すると信じたい。

だから、私は目に見えない才能なんか頼りにしないで着実に前へ前へ進もうとする登場人物たちに元気をもらった。





あと、引用される原民喜の文章にグッときた。


“明るく静かに澄んでいる文体

少しは甘えているようでありながらきびしく深いものを湛えている文体

夢のように美しいが現実のようにたしかな文体”(p57)






ギリシア時代には天文学と音楽を研究すれば世界が解明できると思われていた。

ピアノの鍵盤は88、星座の数も88。


ーーーーーなんだかロマンチック。

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