母親の親友が家に泊まりにきた時、私の部屋にまで聞こえるくらいの大きな声でしていた会話
「あいつ最低」
「っていうより、あのドラマの登場人物全員嫌い」
10代も20代も50代も、女子は変わらないんだなと思った。
突然出た私のひとりごと
「勇気持ってんのかな」
何も考えていなかったのに、なぜか口から出てきた言葉に自分でびっくりして慌ててメモをした。何の勇気が必要だったんだろう。
窓を開けて車を走らせていて、自転車に乗った中学生とすれ違った時に聞こえた言葉
「時速20キロ!」
何の話をしていたんだろう。自転車を全力で漕いで、そのスピードを目指したんだろうか。それとも私のように、何の意味もなく、ただ口をついて出たのだろうか。理由は何にせよ、学校終わりのあの夕方、友達に向かって大きな声で叫んでいた彼が、私には眩しく見えた。いいな。私もその言葉叫びたい。大人になった今はもう、ぼやくことしかできてないから。時速20キロ!。あの一瞬が忘れられない。遭遇できてよかった。
今日も言葉は、生み出されては消えていく。だからこそ切なさを帯びていて、詩的に感じる。その輝きに触れていたい。どうどうと流れる波の中でしがみついていたい。
