
サーフィンを初めてから2ヶ月が過ぎた頃に私は、徐々に立てる回数が増えていった。そんな時、けーたから借りていた板を折ってしまった。本当に心が痛かった。ちょうど板の先端あたりがバキッと。私はその瞬間に海から上がり板を置いてけーたが居る沖まで泳いで折れた事を伝えなきゃと思い急いで泳いだが、打ち寄せる波にのまれ溺れかけた。とても怖い思いをした。
けーたが上がってくるまで砂浜で待つ事にした。上がって来たけーたに板が折れた事を伝え、見せて謝るとけーたは『何これ?イカみたい』と笑って私の顔を見た。なんでこんな時にそんな事を笑って言えるのか私には分からなかった。でもけーたなりの優しさだったのは痛い程感じた。
その頃新しくけーたとなえこという女の子の共通の知り合いのしおりという女の子がバッパーに入って来た。彼女はバイロンベイから来た子で、究極にお金が底をつき車で生活をしているという子だった。ヴァンなどのワゴンならまだしも、セダンの車に住んでいるというから衝撃的だった。彼女の寝床はいつもトランクの中。車のあらゆる場所に彼女の生活用品が転がっていた。しおりもまたサーファーでロングボードのかわいい板に乗っていた。
彼女ともサーフィンに行きすぐに意気投合し仲良くなるのに全く時間がかからなかった。ちょうど私が板を折った3日後に彼女も板を折った。こんな負の連鎖の偶然あるのかと私たちは疑った。
その夕方、しおりはショックを受けて中々Arrawara beachから帰る事が出来なかった。

今、見ても本当に板が真っ二つ…
その週末、私達は板のリペアを出しにいった。彼は自分のことをウィザードと言った。日本語で魔法使い。なんともかわいい表現の仕方だ。中身ももちろんキュートなおじさんだった。ただ彼はホリデイに出てしまうので店に戻るのが2週間後になると言った。私達はその間、サーフィンが出来ない事を考えると一瞬悩んだが価格も安く、何より彼が優しく対応してくれた事もありここに決めた。

2週間の間、私はまたバッパーの板をかりたりスポンジボードに乗ったりと違う板でサーフィンを楽しんだ。
年末の12月27日、いつもの様に仕事後にしおりとサーフィンをしないなえこと向かった。私はパドルが遅いのでいつもみんなとせーので海に入っても置いてきぼりにされてしまう。その日も何人か知り合いが入っていたがいつの間にかみんなを見失った。いつもこうなるとただただ自分のペースで沖に向かった。すると沖に出るまでにあと一息の所でセットの波が来て、その波に私は飲まれた。その時に私の持っていた板が私の顔面、ちょうど目の上あたりに当たった。とりあえず自分の顔がどうなっているか分からなかったので一度上がり、ちょうど入ろうとしていた愛太にねぇ私の目どうなってる?と声をかけると愛太は、やばいやばい早く洗えと焦った顔で私の顔を見た。同時に車で待っていたなえこも駆け寄ってきて同じ様に驚いた顔をした。気づくと私の瞼はどんどん下がって来て視界が狭まって来ているのが分かった。それと同時に地面にはポタポタと赤い血が落ちているのが分かった。顔を水で洗い車のミラーで自分の顔を見ると予想以上にひどく切れていた…これはもしかしたら縫わなくてはならないかもしれないと皆が言った。
ウエットスーツを着たまま車に乗り、バッパーへと向った。