妹が使っている国語の教科書が、テーブルの上に乱雑に置いてある。どうやら近々テストが始まるらしく、テストからの一刻も早い解放を願う声が、妹自身と置かれた教科書の中から聞こえた。今じゃ、”期始めテスト”、”教科書”などといった言葉を、久々に使ったとまで感じる。パンパンにカバンに詰めていたこと、遠くのクラスまで走って貸し借りしていたこと、貸した教科書に「ありがとね♡」と落書きされていたこと...etc テストや教科書の中身は思い出せないが、そんなくだらないエピソードたちは思い出せた。

この教科書に載っている、無数の文字たち。

これを時には暗記したり、クラスみんなで音読したりしていたんだな。



…成人式という儀式に対してアンチテーゼを抱いていた私は、信頼する友人たちの綺麗な姿と、しばらく会っていなかった友人たちの相変わらずさに感動していた。実際に彼らと「久しぶり!」などと言って顔を合わせると、明らかにいつもと違う状況(振袖やスーツで着飾っている状態)だとしても、瞬間的に中学生、いや、小学生の頃にまでタイムスリップしてしまった。記憶の奥底に眠る”あの頃”の蓋がぱかりと開いたのだ。

ここにいる彼らと、何時間目かの授業で音読したあの話や、あの話。

得体の知れないクラムボンをノートに落書きして、先生に「センスがない」と怒られた。

最初だからとお手本でその話を読んだ先生が、なぜ泣きながら読んでいたのかが今ならわかる。

”作者の気持ちを答えなさい”と問われる理由がわからなくて、みんなで散々文句を言っていた放課後。


なんだか、もう子供には戻れないということに、無性に寂しさが込み上げた。

いざ「あなたたちは成人です、大人の仲間入りです」と言われてしまうと、ショックだ。

あんなに大人に恋い焦がれていたのに。同じ教科書はもう読めない。もう彼らと同じ時間を共有することはできない。とっくに卒業しているし、わかっていたはずだったがもう一度再確認した。もうあの頃には、子供には戻れないのだ。

そして周りを見渡すと、振袖やスーツで華やかに着飾っているせいで、そして月日が経ち、かなり顔つきが変化しているせいで、誰だか思い出せない人たちも多かった。だけど、あのこが持っていたDSの色とか、縄跳びの色とか、自然と浮き出てくる。筆箱の柄、20分休みは校庭派だったか校内派だったか、自由帳に何を繰り広げていたか。流行ったカセット(おいでよどうぶつの森…)、カードゲーム(ムシキング…)、歌(ピラメキーノ…)、テレビ番組(ヘキサゴン…)まで。

SNSで共有している部分もあるけど、実際にこうして会うのが最後な人もたくさんいるだろう。

みんな幸せでいてくれ!簡単に死ぬなよ!お互い助けが必要だったら気軽に会おう!

一生を共にしたいと思える人に出会えますように。そして大好きな人との子供ができたら、今の私たち以上に幸せになれるように育てよう。歳をとっても夢を見続けよう。何かに制限されたとしても、お金がなくても、誰かに反対されても、自分の決断を信じよう。戦争がない未来を信じよう。

はいチーズ!の合図で聞こえるシャッター音を聞きながら、そんなことを思っていた。

もちろん自分に対して、言い聞かせている部分もある。

カッコいい大人になろう。時間がかかっても、カッコいい大人になるんだと。

着ていた紫色のカラースーツに、それらの気持ちを精一杯託した。



一日中騒々しい場所に居続けると、眠ろうとベッドで目を閉じた瞬間の無音がより際立つ。普段の生活音を超えた雑音は、とんでもないストレスを身体に与えているのだと実感するとようやく疲労を感じて、気づいたら眠りについていた。  [2020/1/13 5:25]



色々書いています

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