ひしめき合う雲を見るとどうも息が苦しくなる
今朝見たワイドショーに映ったお天気お姉さんの口からは雨が降るなどという単語は出なかったが傘を持った人たちがちらほらと私の前を横切った
天気予報の前のコーナー進行をしていた女子アナは流行遅れの俳優との不倫が噂され番組降板も近いだろう
あの日読んだ小説の終わりはどんなだっただろうか
よく覚えていないが
主人公の恋人は死んだのだろう
人が死んだらどうして人は涙を流すのだろうか
何を思って悲しむのだろうか

ある人が昔、「死人は尊いものだから生きている人間のように歩き回ったりはしない」というようなことを言っていた
足は冷たくなり、指先は少し赤くなっていた
音楽を聞くためだけに所持している旧型のスマートフォンが震える
懐かしい友人からの通知は知らない名前を含んでいた
群れていた雲の隙間から何とも表し難い色が差してくる
明日は晴れるだろうか
空気が一段と冷えて身体を濡らすようだ
夜はまだ始まったばかりである