建物を出ると外はもう暗くて空気は冷たかった。トレーナーにハーフパンツという服装で日中は過ごせたものの、夜のその冷たさが肌に触れ、私だけ季節に置いていかれていることは明らかだった。昨日まで大丈夫だったのに、季節は急に動く。


それと同時に吸い込んだのはキンモクセイの香りだった。気のせいではなく、それはちゃんと入り口の横に植えられていた。


夜のこの冷たさとキンモクセイ。これこれ、これこれこれこれ!私の中で秋といえばキンモクセイであり、キンモクセイといえば夜。同じ香りを昼間かぐより、夜の方が断然幸せな気持ちになる。し、より秋を感じる。そして思い出す、



地元の秋祭り。

10月の2週目の金、土、日と3日間行われるそのお祭りは私の知る限り最大規模で、こんなに多くの人がこの街にいたのかと言うほどたくさんの人が集まる。通りには屋台がたくさん並び、たくさんの山車がでる。その3日間は街中をお囃子の太鼓や笛の音、掛け声が鳴り響く。道路は通行止めになる。受験生にとってその3日間は祭りに行きたい気持ちと勉強しなきゃいけない気持ちの葛藤だった。


大学で地元を離れるまでは毎年秋祭りがそばにあった。受験で行けない年だって嫌でも提灯が目に入るし、そうやって意識しているとすると約20年かけて祭りは身体に染み付いてきたと言える。


キンモクセイが香り出すのはちょうどその時期と重なる。だからキンモクセイが香り出すと、ああ、祭りの空気だ、こんなこんな!と察知して、秋祭りの到来を予感する。(温暖化の影響は今のところなく、今年もそう思ったのと秋祭りの時期はかぶっていた)この感覚こそ、私がそこで生まれ育った証と言えると思う。たぶん、友達もみんな、それぞれそんな感覚を持っていると思う。キンモクセイじゃなくても。










受験生にとって葛藤だったと書いたけれど、その葛藤に負けた年があった。

塾を早く出て、私は好きだった人と祭りに行った。その時も空気はこれくらい冷たかった。



一緒に歩いているだけでこの街の中で誰よりも幸せだな今、、と本気で思った。今ではバカみたいだと思うような、くすっと笑えるような、あたたかくなるような、思い出したくないような、そんな、青春(と言うのは恥ずかしいけど)思い出があったことをここに認めよう。




そのうち恋は終わった。

キンモクセイはそんな記憶も呼び戻す。


夜の秋がどこか寂しく感じられるのはたぶんそのせいだと思う。


  ”私の有頂天な恋は終り” 『やわらかなレタス』より

水たまりをひとつ飛びこえて

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