この一冊が、きっと今日の鞄がスリムに見えぬその訳だとしても、今日、本の世界に入り込んでいく時間や余裕そのものすらないとハナからわかりきっている朝でも、意固地に本一冊を連れ去る。


わたしの朝はいつもそうして始まる。


紅葉舞い踊る昨年の初秋に、山田詠美氏の『4 Unique Girls 人生の主役になるための63のルール』を手に取った。

最初の頁をめくったその日から数え、読了するまでまさかふたつの季節を跨ぐだなんてライター兼小説家志望が情けない。


私情云々はさておき、じっくりと読みすすめていったとても大切な本書の内容についてまず触れたい。


こちらは、『ベッドタイムアイズ』や『A2Z』で知られる山田詠美氏が女性誌「GINGER」にのみ連載を許したコラム63作が一冊となったファンにとっては眩暈を覚えてしまうほど神々しい書物。


わたしと山田詠美氏の出逢いは、それこそこちらの「GINGER」であった。


美容院でカラリーングをしている待ち時間のあいだ、たまたまに手渡された同誌連載のコラムの作者、その人が彼女であった。


なんせ当時は、活字より絵or画だった若き蒼き年ごろ。

それこそ「本なんて...」「読書なんて...」と身の内で「活字そのもの」を遠ざけては、一方的に”読まず嫌い”していた黄金期とも言えよう。


しかし、彼女の綴る言葉はワンセンテンス・ワンセンテンスが不思議なくらいに、すとんと胸に沁み込んでいく。

なんの胸やけも、消化不良もなく...だ。


胸に沁み込んでいったその後も胸の中で消えず絶えず、あーまたあの山田節、いやエイミー節を拝み読みたいと思わせるほど「エンドレスリピート必須」の言葉オンパレードなのだ。


はじめて目にした彼女のコラムを一息で読んだこと、今でも覚えている。忘れられない。


その日から幾年が経ち、わたしはこの『4 Unique Girls 人生の主役になるための63のルール』の存在を知る。

わたしが読み逃していたものもひとつ残らず一冊にまとめあげてくださった幻冬舎さんには御礼状というものをお送りしたいほどに感謝している。


本書を手に取るまで、勿論のこと山田詠美氏の小説も実際手に取って読んできたけれども、わたしはコラムにみるエイミーがとりわけ好きだ。


彼女が綴るコラムは小説で魅せる詠美節のそれとはまったく異なる輝きを帯びていて、読みすすめていけばいくほどに山田詠美氏を「近所のいかしたおねーさん」のように思えてくる不思議。


まるでいつでも会いに行ける距離に住んでいるかのような身近さと、わたしもこうなりたいという言葉に託しきれぬ漠然とした憧れを抱かせる。彼女はそういった本来対局にある二種の感情をひとつにしてわたしたちに宿してくれる。


そしてなんというか、これまたおこがましい話だけれど「一杯ご一緒したくなる」のだ。彼女のコラムを読むとね。


詠美さん、いやここは尊敬の念を込めエイミーと綴らせていただきたい。

エイミーは、例えばずっと腹に据えていた思いや、いつか誰かに言い返せなかった言葉というものを、代筆してくれる。


だから、ああそれわたし言いたかったということのみならず、言いたくても言えなかったんだよねあのとき、という思いをとてもエレガントに・あるときは「おっ」とするほど直球で綴ってくださる。


今回の『4 Unique Girls 人生の主役になるための63のルール』において、一番ささった言葉はこれだった。


「私は、言葉にもドレスコードがあると思っている。気のおけない集まりに正装して行ったらおかしいように、セレモニーの場に部屋着で行ったら変である。素のままの自分を見て!と裸で外に出たら犯罪だし、筒しみを忘れたくないの、と温泉でバスタオルを巻いたままお湯に入られたら超迷惑。何事も限りなくそういうことに似ていると思うの」


わたしの『4 Unique Girls 人生の主役になるための63のルール』は、マーカーだらけ。いつか、いつか、山田詠美氏にお会いできた暁には、本書を持参して想いの丈をお話できたら素敵だなと思えば、また夢がひとつ増える。

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