あんなに大好きだったにおいも
もう思い出せない
それは季節外れの風邪のせい?
きみが仕事に出かけた後、
わたしたちを包んでいた毛布をひとりで思いきり被って
きみのにおいをわたしの全身に塗したの
知らないでしょ?
本当はとっくに目覚めていたけど
眠っているふりをしたら
額に優しくキスをするから
それを待つようにいつも目を閉じていたの
きっときみは知っていたよね

今年は梅雨が明ける気配がない
雨がすきだって言ったのは
きみが黙ってさす傘に無理やり入るのがすきだったから
嫌な顔をわたしに向けた後は
前を向いて、笑って
左肩をいつもびしょびしょにしていたでしょ
もっと近づいて欲しかった
決して言えなかったけど
わたしは今でも傘を持たずに出掛けてしまうよ