私が眠ろうとするときに限ってあなたがギターを取り出すから、シングルの布団を一時的に自分の物にすることができた。はいはいその時間ね、と、布団に潜って目を閉じる。E、A、D...わざわざご丁寧にチューニングまでするせいで、中断させることもできなくなってしまった。なんだか一生懸命で。

でも、こちらもただでさえ疲れているのだ。朝も早い。眠りにつきたい。布団にぎゅうぎゅうで眠らなくて済むのは嬉しいが、一時的でいい。さっさと横に来て、私を後ろから抱擁し、二人で眠ろう。薄汚い白色の蛍光灯が眩しいからと消そうとすると、リモコンが見つからない。すでに隠されたリモコンを、決して布団から出ずに探した。手探りの範囲は布団内。そして遠くの乱雑に本や雑誌が積まれたタワー、愛称は蔦屋タワー(8割が近くの蔦屋で買ったものだから)の上に乗るリモコンを見つけ、諦めた。いいや、目を閉じれば暗闇だ。

あなたはギターをよいせと運び、コードが書かれたiPadを、うつ伏せに眠る私の背中に置いた。小声で「よし」と呟いたくせに、なかなか始まらないのも毎度のこと。あなたは今日も相変わらずだね。

〈髪の毛の匂いを嗅ぎあって くさいなあってふざけあったり〉

ギターと歌はたどたどしいが、あなたがこの曲を大事にしているのを知っている。だからこの曲が好きだ。とても好き。

次のコードを探しているわずかな間に、「夜だから静かにね。みんな寝てるから」と言った。するとあなたはこちらを見ながら頷いて、〈日々の恨み 日々の妬み 君が笑えば解決することばかりさ〉と歌う。そこだけすらすらと歌うから、なんだか素直に照れてしまった。今の自分を肯定された気分になったのだ。「好き」「愛してる」の言葉よりも、あなたらしい愛情表現だなぁと思う。

この曲を私とあなたの恋愛模様に重ねて、勝手に自分たちの特別な曲にするのを許してほしい。



気づいたらあなたが横にいて、カーテンが朝の風で揺れていた。眠るあなたの首筋をすうっと嗅ぐと本当にパンの匂いがするので、眠る前にまたあなたがギターを弾いて歌うとき、教えてあげよう。


[実在しないお話 - フィクション]

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