その日は雨が降った。 東京ドームの屋根のある場所へたどり着く道中では、色とりどりの傘を差した人々が歩く。 雨はいつだって私の足取りを重くさせるが、今日は待ちわびた日、雨音さえも音楽の一部に聴こえるくらい、私は上機嫌だった。 

赤色と青色の衣類を身にまとった人が多かったのは、今ツアーで引っ提げているアルバム、 昨年末にリリースされた「POP VIRUS」のジャケットの影響だろう。土で出来た心臓から赤色と青色の花が咲いた、<心臓から花が咲くように>という「Pop Virus」の歌詞が意識さ れたジャケット。グッズのタオルやTシャツもその二色で展開され、会場はそれらを身に付けた人でいっそう華やかだった。

開演前の SE には、彼の敬愛するMichael Jackson「Off the Wall」のアルバム曲。一度に五万人を収容できる東京ドーム中に、マイケルが流れる。いよいよ天国のマイケルにも、彼のライヴの様子が耳に入りそうな予感さえして、少しだけ、マイケルを追悼した。


開演 18 時半の彼の登場はシンプルなものだった。派手な音に合わせてドカーン!と登場するかと思いきや、(そしてお決まりの、ウルトラマンのポーズをするとも思っていた)(だからこの日撮った写真の私は、みんなウルトラマンのポーズである)、階段を上がり、無音の中、中央ステージに登場。存在確認に追い付かないまま「あ、星野源だ」と、思わずクー ルな反応。だがそこからが凄かった。彼の歌声を聴いた瞬間、時速 70Km のジェットコースターに搭乗、 星野源の音楽へと吸い込まれる。あの感覚、もう二度と味わえないのがライヴだ。 

「化物」「桜の森」「時よ」などのマストとなる曲たちに、アルバム「POP VIRUS」の最新 曲を入り交えたセットリスト。五万人全員とアイコンタクトをとるように、常に会場を大きく見渡しながら、歌う。中央よりややスタンド席よりのステージで披露された「プリン」「くだらないの中に」では、彼のリラックスした様子が垣間見られた。主要メンバーでの室内楽的アンサンブル。そこには5万人を収容する東京ドームだとは思えない、高校生の放課後さながらの雰囲気が。音楽好きな友達同士が、ややふざけながら音を使って遊んでいる様子に、"私もあの場に混ざりたい"と思い焦がれた。

その中でも特に、近年音楽チャートにランクインしてきた彼の曲たちは、私たちにさらなる多幸感を与えた。マイケルを追悼した曲とも言われている「SUN」の中間部、<祈り届くなら 安らかな場所にいてよ>という歌詞を歌いながら、天へ祈る素振りを見せた場面では、あまりの光景に言葉を失った。目の奥からじわじわ涙が染み出てくるのがわかって、"マイケル、あなたの思いは届いているよ。音楽はちゃんと未来へ繋がっている"と、再びマイケルを追悼。そして「恋」で開幕する恋ダンス。その後「Week End」。「恋」 でしっかりと同じ振り付けで踊らされた後、「今度は自由に踊るところが見たい」との要求。 全く源ちゃんはわがままだな!と思いつつ、自然と体が動いてしまうのがこの曲。後半、歌詞のない「ラララ~」と歌う場面では、みんなで声を合わせ、アンセム状態に。すると、彼は両耳につけていたイヤモニを乱雑に外し、最高だと言わんばかりに体を無茶苦茶に動かした。 その様子にもたまらない感情になり、我慢が効かない涙が。最新曲「アイデア」の中間部、弾き語りを歌うセカンドステージへ移動する道中、向かう百メートルほどの道を歩く彼は、自身のこれまでの音楽人生を振り返っていたように見えた。一歩一歩を歩いて行き、原点へ戻るように弾き語る。<闇の中から 歌が聴こえた あなたの胸のから刻む鼓動は 一つの歌だ 胸に手を置けばそこで鳴ってる>。ギターの弦を少し撫でた音が、東京ドームに響く。そこに五万人いようが、家の中で作曲し、孤独に音楽を歌い続けたあの頃の気持ちを忘れないと、 そう自身に言い聞かせていたようにも見えた瞬間だ。「僕はこの曲をリリースするとき、怖かった。でも、みんなとても温かい反応で...本当にありがとうございます」、深々とお辞儀をする彼に、鳴りやまない拍手。少しだけ言葉を詰まらせ、目を潤ませる彼に、決して拍手は鳴りやまなかった。 


"この光景を忘れたくない!"のタイミングで映像を目に焼き付ける。耳に入れておきたい情報量と、目に焼き付けたい情報量の多さで何度もパンクしかけたが、この日が自身のエポックメイキングになることを確信していた。未来を生きてやるぞという活力と、未来を生きていける自信が生まれたからだ。そして、このライブでの光景を独り占めしたくなった。誰にも話したくない、自分だけのものだと。 確かにあの空間に五万人いたが、一人一人が思いのままに彼の音楽を聴いているように思えた。「自由に踊って!」という呼びかけの通り、音楽に体全体を揺らし、ばらばらに踊り、泣き、笑い、歌う五万人がそれを表していた。そして、かつて彼が<僕は時代のものじゃなくて あなたのも のになりたいんだ>と歌ったことを思い出した。いくら“流行”、“時の人”と呼ばれようが、 それは簡易的な表現言葉の一つであるだけで、彼の根本にあるものは何も変わっていない。 五万人、ではなく、一人一人を意識したライヴ。星野源の音楽は確かに、私(それぞれみんな)だけのものになっている。


星野源、彼が見てきた過去が暗く苦しいものだとしても、彼が見ている今が嫌気が差すほど生き辛いものだとしても、彼が見ようとする未来に、ほんの少しの期待があるならば、それでいい。彼は過去や今、犯してしまった過ち、苦しみから逃げない。間違えてもいい、生きて音楽を聴けてさえいればと、挫折と希望を同時に持っている。彼は、無数の光を浴びようと、決して暗闇を忘れない、誰よりも人間らしいアーティストである。それを何度も再確認したライヴだった。


無造作に再生した「POP VIRUS」だったが、イヤホンから聴こえてくるその音楽は、ライヴの前と後では全く別物だった。自身のこの目で見たあの光景が、自然と浮かぶ。そして偶然にも、このブログを書き終えた今日は雨。一週間前のライヴの日と同じ、雨が降った。


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