ぜったいにずっと一緒にいたいとか思っていた人が、わたしの人生の中でどうでもいい人になって、むしろ少しの嫌悪感を覚えてしまう人になってしまったのがとても悲しい。

あのときはたしかに好きだったのに。

今はもう顔も声も手の大きさも首筋の匂いも、なにもかも曖昧で思い出せない。

たしかなものがなにひとつないのだ。

記憶なんていつだって頼りなくて、ろくなことがない。


あの人は優しかった。優しすぎて、いっしょにいても息がつまりそうだった。

実際に、あの人の優しさは私を何度も殺した。そういう優しさは身を滅ぼすと思った。


私たちは電車でどこへでも行けた。あの人は車を持っていなかった。私を車に乗せようとしないところが好きだった。男というのはみんな車に乗せたがるのはなぜなんだろう。そういうことをしないところが気に入っていた。


かわいそうな私たち。どうすることもできなかった。いつからか、一緒にいても先はなにもなくて、飽和状態だった。

なれなれしい夜のせいで、つまらなく悲しいことを、考えても仕方のないことを考えてる。

どうどう巡り。私は絶望と孤独の象徴みたいだなと思う。

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